シンプル育児アドバイザーの石鍋てるみです。
特別支援学校に通っているお母さんから
聞いた話で、印象に残っている事があります。
通学のために毎朝送迎バスに乗って
出かけるのですが、
なかなか乗りたがらないで、
暴れてしまう子がいたそうです。
お母さんも、職員も
どうしたら、機嫌よくバスに乗ってくれるのか
試行錯誤して何度も話し合いをして
対策を立てては、実行するのですが
思うように効果が出ません。
むしろ、ますます抵抗するように
なって見えたそうです。
職員の手を振り払って、
公道に走り出しそうになったこともあって、
危険回避のために、
紐で身体をつないでおこうかなど
いろんな案が出されたそうです。
どうして、この子はバスに乗りたがらないのか?
聴覚過敏もあるから、バスの音が嫌なのか?
狭い空間が苦手?
学校が嫌なのか?何か嫌な思いをしたのだろうか?
自閉症の子どもの心の中を
理解してあげたいと
周りの大人はいろんな思いを巡らせます。
きっと、何か理由があるはず。
悶々とこの課題に対しての解決策を
考える毎日が過ぎていた時
ある事件が起こります。
いつものように、バスに乗り込むときに
駄々をこね、癇癪を起こし始めてしまった
その子の近くを、どこかのおじさんが
通りかかりました。
そして、その子がちょっと飛び出そうと
動いたときに
おじさんにぶつかりそうになってしまいました。
『危ないだろ!ちゃんと言うこと聞いて
さっさと乗りなさい!ぼくも怪我するぞ!』
おじさんの厳しい一喝が。
その場にいたお母さん、職員は
とにかく、おじさんに謝罪するのみです。
子どもに代わって謝ります。
それをみて、おじさんはもう一言。
『ぼく、わかったか!』
大きな声に驚いたこの子は
オドオドしていたそうです。
そのまま、おじさんは立ち去ってしまいました。
驚いたのはその後です。
その子は、自分からバスに乗り込んで行きます。
次の日も、その次の日も。
もう、癇癪も起こしません。
『あれだけ、みんなで子どもの気持ちになって
試行錯誤していたのはなんだったんだろうって
思いました。』
そんなふうに、その時のことを
話してくれたお母さん。
シンプルなおじさんの一言が
子どもにわかりやすく
心に響いたのでしょう。
子ども自身がどう行動すべきなのか
はっきりわかったのだと思います。
この話を聞いて、
私が反省した事があります。
子どもの気持ちを尊重しましょうとか
理解しましょうという
最近の指導で注意される
子どもへの心がけばかりにこだわって
大事な事を怠っているかもしれないと
感じたのです。
子どもの力を引き出す指導方法がわからないとか、
厳しい人と思われたくないと言う思いで
先延ばししていたかもしれないと感じました。
丁寧に支援者が教育できれば
必ず子どもはできるようになるという
可能性から逃げていたかもしれません。
特に発達に偏りがある子どもに
教育することは、個別性を踏まえた専門知識と
根気が必要です。
その子が嫌がることや厳しい指導は
一歩間違えれば、
虐待に捉えられてしまう場合もあります。
そういったことを気にしてしまうため
本当に伝えなくてはいけないことを
ストレートに指導することが
できなくなっていました。
子どもだから、今はやらせてあげよう。
発達に特性がある子だから、
これができなくても当たり前だから、
この子のできることに注目して
育てましょうと言うような
曖昧な指導しかできていなかったと反省しました。
そんな理由をつけたり、勝手に思い込んで
子どもの成長できる可能性を
奪っていたかもしれないと思いました。
どんな子どもでも、社会で生きていくために
身につけていかなくてはいけない
規範、ルールがあります。
それができない状態であれば、
どんな子どもでもできるように
教育していく必要性はあるでしょう。
時間をかけてでも、小さいうちから
身につけさせなくてはいけないことが
あるのです。
どんな行動をとらなくてはいけないのか
やってはいけないのかを
毅然と子どもに教育していくという関わり方も
支援者としては忘れてはいけない視点です。
何でできないのか?
子どもに寄り添う、子どもの立場になって
考えることも大事ですが、
時にはこのおじさんのように
ダメなものはダメなんだと
はっきりと伝えていくことで
子どもが理解できる事があります。
子どもは学び、成長したいのです。
今よりも、もっと良い人間に
なりたいと思っています。
愛される存在になりたいのです。
そのためには、先人の話を
素直に聞く力、行動しようとする力を
育むことも大事です。
人の言うことを聞くことで
自分を成長させていく喜びを
感じていけることで、
学ぼうという姿勢が作られます。
この子も、朝バスに乗る事ができることで
みんなと気持ちよく過ごせること、
褒められることで他のことに対しても
意欲が変わってきたようです。
障害の有無に関わらず
どんな子どもでも、
好ましいこと、そうでないことは
大人に教えてもらわないと
区別がつけにくいものです。
すぐに理解できる子と
時間がかかる子がいるだけです。
曖昧にせず、やってはいけないことは
しっかりと教えてあげることは
社会に出てから自信を持って行動できる
土台になります。
人と気持ちよく過ごせるような
自分になることは
人生にとってとても重要なことだと思います。
大人になって、人に迷惑をかける行動や
人と協調できない人もいます。
子どもには、そうなってほしくないと
親なら誰でも思うことでしょう。
公共の場で騒ぐ、暴れる、
人を叩くなど、小さな子どもだから
何か理由があるのだからと
許すべきことではありません。
毅然とやらせないという
厳しい姿勢をとって、
教えていきましょう。
子どもが小さいうちだからこそ
大人の言うことをきかせる時期なのです。
支援者の勝手な思いを押し付けて
教えるのではなく、
法律的に決まっていること
誰もが日本で暮らす上で
守るべきルールを厳選して、
教育的に関わると言う姿勢に
注意して時には厳しく繰り返して
身につけられるように
関わっていきたいと思います。
子どもができないとしたら、
支援者の方に原因があります。
子どもは必ず成長できる力を
持っているのですから。