シンプル育児アドバイザーの石鍋てるみです。
以前、どこかでご紹介したことがあったかもしれませんが、
東田直樹さんの著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』が、
映画化され、今月2日から、公開されたことを知り、
早速昨日、鑑賞に行きました。
この本は、東田さんが13歳の時に書いた本ですが、
自閉症の子ども達が、どのような世界に生活しているのかを、
少しでも知りたいと思っていた私が読んだのが、
もう13.14年前になるかもしれません。
私は、自閉症に対して思いこんでいる観念があって、
その枠の範囲でしか子どもをみていなかったことに
気付かされた1冊です。
それまでの自閉症の子どもに対しての考え方を
全く変えてしまうほどの衝撃をうけた本でしたので、
それを、映像でどう表現されているのか
楽しみに見させてもらいました。
この本は、世界30カ国以上で出版され、
世界的ベストセラーになっています。
映画化したのはイギリスの監督です。
(日本でなかったのが、ちょっと残念でした。)
映画での、映像は、こんな風に
五感での感じ方が違うのかと
不思議な感じの映像になっていました。
東田さんは、思いを会話にできない自閉症者の心の声を、
ひらがなの並ぶ紙の文字盤を使ってこの本を書き上げたようですが、
映画のなかでも当事者が文字盤を使う様子が描かれてます。
声で表現される言葉と心の言葉が同じでない感覚や、
同じことを繰り返す、パニックを起こす
不思議だと感じる行動にも、理由があることも
わかってきます。
彼らの心の声がわかったとき、
内容の知性と感性の高いことに驚き、
何度も心を揺さぶられます。
そして、「普通とは?」「個性とは何か」という疑問、
コミュニケーションのありかたそのものも
考えさせられます。
当事者のご家族や、支援者が、この本によって
自閉症の子供に対する思いが大きく変化したことは
間違いありません。
『良い母親であろうとする事だけ考えていて、
目の前の子供の姿を見ていなかった』
あるお母さんは、このように語っています。
私も同じだったことを思い出しました。
自分が良い親と思われたい、
指導力のある先生だと評価されたいという思いで、
子どもを育てようとしていて、
本当の子どもの思いに気づかず、
わかろうとしていなかったのです。
自閉症の子どもは、認知、知的にも遅れているから、
こんな困った行動をするんだ、行動を治させないといけない、
普通を教えないといけないと、単純に決めつけ、
いわゆる定型発達の人が生活しやすく作られている社会に
合わせようとした生活を強いることになります。
けれども、こんなに自然や人間の内面を繊細に感じとれる
特性を持った人がいて、その感性から受け取れる
気づきや、やさしさみたいなものを
見ようともしないで、殺してしまっているかもしれないのです。
このような特性のある人たちが、
一定数同じ社会で生活していることを、
理解して、守っていかなくてはいけないと思います。
この人たちも、同じように暮らしやすい社会で
楽しく生きる権利があるはずです。
この映画に世界4カ国
(インド、イギリス、アメリカ、シエラレオネ)、
5名の自閉症の少年少女たちの姿や
その家族たちの様子が紹介されています。
国によって、偏見や、差別が強く、過酷な条件の中で
過ごしている人が紹介されます。
実際は日本でも同じような偏見、差別があるのではないかと、
問題は根深いことを改めて考えさせられました。
障害を個性として理解して、
自然と助け合うことができるような社会がつくれたら
素敵だと思います。
まだまだ,解明されていない自閉症の世界。
東田さんのような方が、
表現できるツールを持ち、
教えてくれることで、支援の効果的な方法なども
もっと変化してくるのではないかと期待もしています。
たとえ実感としてはむずかしくても、
少しでも自閉症の世界を知ることは
障害に対する見方や支援への想像力が広がります。
興味がある人はぜひ見てほしいです。