シンプル育児アドバイザーの石鍋てるみです。
先日、3歳児健診の後で、再検査をすすめられたといって
心配しているお母さんがいました。
うかがってみると、聴力検査は問題ないといわれたけれど、
視力検査が全くできなかったそうなのです。
ふざけてしまって、まず取り組めなかったそうで、
『普段は見えていない感じはないから、
受診しなくても大丈夫だとは思うんですけど・・・」
お母さん。
私は『この時期だからこそ、確認しておくことは重要なので、
ぜひ、受診はしてくださいね』と申し上げました。
子どもの物の見え方は、外から見ただけでは
わかりませんよね。
一見、普通に日常を送っていても、眼科で調べてみたら
視力がとても悪かったということもあります。
ちゃんと見えていると確認されていないうちは安心できません。
3歳という時期に視力を確認することは特に重要なのです。
なぜこの時期が大切なのか・・・
私たち生物は親から受け継いだ遺伝子を持っています。
遺伝情報は刺激がなければ正常に機能することはできません。
例えば、生まれたばかりの猫の目を2週間ほど
閉じたままにすると視力を失ってしまったという、
実験結果があります。
この実験では、視覚に対する正常な遺伝子はあっても、
視覚に対する刺激を、「大切な時期」にを与えなかったため、
視覚機能が失われてしまったということが分かります。
人には、神経回路(ニューロン)が、特に
集中的に作られたり、回路の組み替えが盛んに行われる
時期があります。
この時期は、生後の限られた期間しかない、
一生に一度しかない、
脳の発達の「大切な時期」にあたります。
このような「大切な時期」を、【臨界期】といいます。
それぞれ「視覚の臨界期」「聴覚の臨界期」
「言語能力の臨界期」など、
機能によってこの期間は多少変わっています。
一生に1度しかない「臨界期」って、
大体生後どのくらいの期間をいうのでしょうか?
研究結果では、言語能力:0歳〜9歳
運動能力:0歳〜4歳 絶対音感:0歳〜4歳
数学的能力:1歳〜4歳 といわれます。
とにかく、一生に1度の発達の伸びが大きいチャンスですから
この【臨界期】は幼児教育でも活かされています。
乳幼児に関わる仕事では、特に【臨界期】を意識して
環境設定、遊びなど考えていきます。
今日のアドバイス
臨界期を理解して、発達の不安を先延ばししない。
身体の機能にも臨界期はあります。
両眼視機能の発達の臨界期は1歳前後にピークがあり、
その後8歳くらいまでです。
8歳までに物をきちんと見る力(視力・遠近感など)が完成されていないと
それ以降、メガネやコンタクトレンズで補正をしても
正常な視覚の機能は獲得できません。
以前、片側だけ強度の『遠視』だったという子どもがいました。
普段子ども自身は不自由な様子はまったくありませんし
いつも見ているお母さんでも気づきませんでした。
強い「遠視」「乱視」といった屈性異常がある場合、
眼の奥にある網膜に画像の焦点がきちんと合わず、
正確な情報が脳に送られません。
目の機能は、目だけの問題ではなく、
脳にきちんとした情報を送ることで正常な機能が育ちます。
この子どものように、片方だけ強度な『遠視』だった場合、
両眼でみているときは、見える側の画像を脳に送られ
認識しています。ですから、見えないとは感じません。
そのまま気づかないままだったら、片方だけ視力が育たない
「不同視弱視」になっていたかもしれません。
幸い、3歳児の保育園での視力検査で発見でき、
治療をうけたことで回復に向かうことができました。
視覚機能は視線が上がってくる3歳ごろが一番発達します。
遠近感や空間の認知という能力が大きく発達する時期になるので、
邪魔する視力の課題がないか確認しておくことが重要です。
小さい子どもには視力検査は難しい面もあります。
小学生になってもう少しちゃんと検査ができるようになってから
受診しようなどと思ってしまうことがあると思います。
けれども、視機能の臨界期を理解していれば、
この先延ばしはよくないということが分かると思います。
早く異常を見つけることで、子どもの一生の機能獲得を
助けることができます。
ぜひ、安心するためにも、3歳前後、遅くとも就学前には
眼科受診をして確認してもらうことをおすすめします。