シンプル育児アドバイザーの石鍋てるみです。
今日は、おすすめの本をご紹介します。
保育園では、0歳児から5歳児まで
何度読んでも大人気、
そして私の5人の子どもたちも大好きな
『はらぺこあおむし』です。
残念なことに、
作者のエリック・カールさんは、2021年5月27日に
マサチューセッツ州にあるアトリエで、91歳で亡くなりました。
絵本だけでなく、やさしいお顔のおじいちゃんと
親しんでいたので突然の訃報には
子どももショックだったようです。
この絵本は、小さなおなかを空かせたあおむしが、
毎日、たくさんの食べ物を食べて、
きれいな大きな蝶々になるまでのお話です。
YouTubeやDVD・歌・グッズなどもあって、
誰もが一度は見たことがあるというくらい
有名な絵本です。
1969年に出版され、70以上の言語に翻訳され、
発行部数は5500万部を超えているというのですから、
本当に世界中で愛されている名作です。
この絵本は、あおむしの成長・曜日・数・たべものなど
たくさんの要素が内容に含まれています。
さらに、かわいいあおむしが、いっぱい食べたあとが、
丸くくりぬかれていたり、
めくるページの幅が違っていたり、
鮮やかな色彩や、絵の質感など、
何度見ても楽しめる絵本になっています。
読み聞かせでも、色・数・曜日など、
子どもの年齢に合わせて、意識をして読んでいくことで
自然と楽しんで学ぶことができます。
とにかく、キャラクターがかわいい。
そして、小さなあおむしは、
どんどん、たくさんの物を吸収して、
さなぎになって、一度休憩することもあるけれど
そのあと、大きく、きれいな姿に成長して、
羽ばたいていくという
子どもの成長にも重なって希望と勇気がもらえます。
子どもたちも、この最後の場面では
大きな歓声をあげます。
何度読んでも、この部分がくると、
ページをめくる前から
立ち上がろうとウズウズしている子も
たくさんいます。
さなぎの部分の閉塞感から、
蝶に変わって飛び立つときの解放感が
子どもの心をワクワクさせるようです。
読むほうも、本を蝶々のように、
子どもの上空を、はためかせたりして、
楽しんでいます。
楽しみ方がどんどん広がる絵本です。
作者のカールさんの生い立ちを拝見すると、
常に状況が悪い中でも、そのことを逆に活かして
人生を歩まれてきたことがうかがえます。
カールさんは、インタビューのなかで
ドイツのナチス政権下で幼い頃を過ごした体験から、
戦争の悲しさを絵本を通して喜びに
変えてきたといわれています。
第2次世界大戦中、街のすべてが灰色だった世界から、
色が、自由と平和のシンボルとして、
心に穏やかさをもたらしてくれると思えるようになった経験から、
色鮮やかな絵を描くようになったそうです。
人は、悲しさ、辛さを体験しますが、
それを体験したからこそ見える
理想・夢・喜びがあるのだと思います。
マイナスに見える状況でも、
捉え方次第で、自分の生き方は変えられることを
教えてくれます。
さらにカールさんは12歳のとき、
美術の先生が見せてくれた絵画の鮮やかな色が、
心に強く刻まれたといっています。
先生が、『君は自由に絵を描けばいいんだ』と
言ってくれた時の経験を、
老年期のカールさんは振り返っています。
子どもの頃の、何気ない大人の一言が、
大きく心に残っている経験がある方は多いと思います。
ある言葉が、自分の心の奥にある何かに響いた時
その言葉が深くしみ込んでいくと思います。
幼少期のカールさんには、
絵を通して楽しい明るい世界を伝えたいという思いが、
心の深い部分にあったのでしょう。
カールさんは、その言葉通りに、
自分の見る世界を変えていく人生を歩んで、
たくさんの功績をもたらしたわけです。
言葉って、本当に不思議な力を持っていますよね。
今日は、追悼の思いを込めて、
ゆっくりとカールさんの作品を
見直してみようと思います。
