シンプル育児アドバイザーの石鍋てるみです。
先日、感覚過敏・鈍麻についてお伝えしましたが、
感覚というものは、人によって感じ方が違っていて、
時には、他人とのコミュニケーションでトラブルになる元だったりします。
家族で同じ部屋にいても、暑がりと寒がりがいて、
エアコンの設定温度で、もめることがありました。
料理の味付けも、塩加減が薄いとか濃いとか
人それぞれ好みがあって、苦労した人もいるかもしれませんね。
人間は生まれた直後には「五感以外の感覚」は持っていません。
ルドルフ・シュタイナーは二次的な感覚も含めて、
五感+生命感覚、運動感覚、平衡感覚、熱感覚、言語感覚、
思考感覚、自我感覚の「人間には12の感覚がある」と言っています。
この五感によって取り入れた情報を感じ直す「二次的な感覚」は、
育ちの過程での様々な体験や、他の人間とのかかわりによって
育っていく感覚なので、人によって感じ方は違うものになります。
赤ちゃんの頃から、たくさんの感覚刺激を受けることで、
その感覚と脳へのネットワークは作られていくので、
乳幼児期の脳の回路が爆発的に増えていく時期に
感覚刺激を経験することは、脳の発達にとても重要なものになります。
受け取る情報を、脳で整理して処理して受け取る、
感じ直す、変換の部分が個人の脳の機能によって違ったり、
その時の感情によって変わったりします。
この変換の部分の変化を感じる例として
自分の経験を振り返ってみると、
部活動で試合に出ているときには、感じなかったのに、
試合が終わってほっとしたら、
足首を捻挫していてものすごく痛いことに気がついたとか、
妊娠したら、やたら、妊婦さんや、赤ちゃんばかり目につくとか
人込みの雑踏の中でも、小声で話す友だちの声は
聞き取れたりといったことが思い浮かびます。
発達障害・グレーゾーンの子どもの中で、
感覚刺激を脳で処理することに特性がある子どもがいます。
同じ状況であっても、選択される情報も違うし、
その情報を脳で変換する時の意味付けも違っていて
結果全く違う感覚としてインプットされます。
それが、感覚過敏・鈍麻という形であらわれます。
感覚過敏・鈍麻が、生活に支障が出るほどの程度になっている場合は、
特別な配慮が必要になります。
今日のアドバイス
他人の感じている感覚は、自分とは違っていることを理解する。
感覚の機能一つをとっても、自分と全く同じように感じることは
あり得ないと思いませんか?
一見分かり合ったように、感じる一瞬があっても、
本当に自分と同じ感覚でいるのかはわからないし、
比べることもできません。
ですから、感覚過敏・鈍麻があっても、なくても、
そのことで、困っている人がいた場合、
周囲の人がサポートできることは何ら変わらないのです。
耳がきこえにくい人に、
『気合いや努力で耳を良くしましょう』と提案しませんよね。
おそらく、
聞き取りやすいように、大きな声で話しかける、
雑音を少なくして、聴こえやすいように環境を整える、
補聴器を使うなどの工夫などを提案すると思います。
「普通の感じ方とちがうから」
「自分と感じ方がちがうから」といって
相手の感覚を否定するのではなく、
その人の感じたことを認めて理解しようとすることから
はじめましょう。
どんな風に世界を感じているのか想像し、
どんな工夫をすれば過ごしやすくなるのか
一緒に考えていくことが必要です。
苦手の元がわかると、本人もまわりの人も、
自分や誰かを責めることなく、共通の理解をもち、
工夫を探すことができます。
よい対処方法がすぐに見つからなくても、
みんなで苦手と工夫を見つけようとすることは、
安心と信頼感につながります。
感覚過敏に対してサポートする場合、その刺激に対して
「無理矢理にでも慣れさせる」という対処法は厳禁です。
これは、解決に繋がらないと同時に、トラウマになるなど
心身の健康を害するリスクが非常に高くなってしまうからです。
原因をとりのぞく・はなれる・さけるといった方法や、
感覚統合のアプローチなどが有効です。
まず家庭で取り組みやすいのは、
原因をとりのぞく・はなれる・さけるといった工夫が
やりやすいと思います。
アイテムを使用する工夫の例としては
聴覚過敏への「耳せん」「イヤーマフ」
視覚過敏への「サングラス」「つばのある帽子」「パーティション」
嗅覚過敏への「マスク」「好きな香りのアロマを持つ」など
環境の工夫の例としては、
インテリアはカラフルなものを避ける、明るさを適度に調節する。
掲示物を少なくする、部屋の中はすっきり片付ける、
音の原因をとりのぞく、
洋服のタグは縫い目からとる、手を握るときは強めに握る。
食べられない食材は使わない
また、辛くなってしまったときにはどう行動したらいいのか、
考えておくと、安心できる場合があります。
気持ち悪くなったら手をあげて退室する、
隣の部屋へ移動する、耳をふさぐ、
目を閉じる、一人用テントに入るなど。
感覚過敏は、そのときの体調や気分によっても大きく左右されます。
同じ感覚刺激であっても、体調が悪かったり、
緊張や不安、イライラがあるときには、感覚過敏が出やすくなります。
リラックスできる状態や、好きなこと集中しているときは
苦手な刺激があっても大丈夫なこともあります。
また、「今から大きな音が2回なります」とか、
「お熱を測るからここに体温計をいれるよ」などあらかじめ伝え、
こころの準備や理解ができるように説明することで
刺激を受け入れやすくなる場合があります。
このように、特性を理解し、苦手な刺激を減らす工夫をして、
生活全体を安心できる環境にすることができます。
そのことが、本人がリラックスして生活ができることに繋がって、
さらに刺激への反応が落ち着いてきます。
感覚過敏、鈍麻という特性は決してマイナスなことではありません。
感覚過敏や感覚鈍麻の特性を活かして「調香師」や「バリスタ」など
専門性のあるお仕事に就く方もいます。
個人の特性による苦痛は軽減し、うまく付き合っていくことで、
生活しやすくすることができます。
子どもと一緒に対応を工夫してみましょう。