石鍋てるみです。
あなたは、自分の子どもの頃の記憶って
どの程度ありますか?
私はほとんど覚えていないことが多いのですが
それでも、時間が長く感じていたことは
よく覚えています。
学校が終わってから
校庭で鬼ごっこやしょんべん地図なんていう
遊びで楽しんだ後に
下校途中に山の中の木の実を摘んだり
レンゲで冠を編んだり、
四葉のクローバーを探したりして
夕焼けを見て、明日の天気の当てっこしたりして
帰宅してました。
母親が、仕事から帰ってくるまでの
留守番中に、編み物したり
歌を歌ったり、本を読んだりして過ごします。
そろばん、習字塾がある日は
ちょっと、おやつをつまんで行ってきて、
風呂に入り、夕飯を食べ
みんなでテレビを見て
「早く寝なさい!」って言われながら
布団に入って寝るという感じ。
今振り返る、学校が終わってから寝るまでに時間が
たっぷりあったような気がします。
夏休みなんて、とんでもなく長いお休みに感じていました。
それが、いつの頃からか
時間があっという間に過ぎていくようになって
今では、半日があっという間、
一年もあっという間です。
この現象は、年を重ねるごとに
スピードを増すという人もいます。
ある時からっていうのは
いつの頃だったのか?
子どもは時間という存在をいつの頃から
感じるようになるのでしょう。
子どもと遊んでいると、
そんなことをフッと思うことがあります。
くるくる回る風車をジーと眺めて
楽しそうにいつまでも見続けている子。
砂遊びに夢中になっている子。
太陽に照らされた自分の影の動きに
喜んではしゃいでいる子。
見るもの、触るもの何もかもが
新鮮な経験の連続の生活。
しかも、気持ちは自分の内側に向いているから
他の人がどうしたいと思っているかとか
あまり気になりません。
近い未来に何が予定されてるとか
過去に何があったのかなんて
関係のない今だけに生きています。
ただ、今目の前にあることが楽しくて
没頭できる才能。
これは、残念ですが一生のうちに
この子どもの時期にしか経験することはできません。
子どもは、10歳前後に意識の目覚めの時期を迎えます。
あなたも、もしかしたら
その瞬間を覚えてるかもしれません。
夢から覚めちゃう感じで、
自分の外側が一気に分かり始めてしまった瞬間。
それまで完璧に見えていた親の姿が
普通の人間だと気づいてしまうのです。
子どもにかかっていた
『親は完璧』という魔法が解けちゃう。
それまで、誤魔化せていた化けの皮が
この時剥がれて見透かされてしまいます。
親が幼稚であったり、子どもを抑圧したり、
愛情に見せかけて親の都合のいいように
コントロールしてきた場合も
バレてしまいます。
子どもが精神的に親より大人の場合
親を気遣い、自分の受け止め方を
自己調整しようと
頑張ってしまう子どももいます。
子どもの心の病気はこの頃から増えてきます。
この時期を迎えたことは
子どもを見ればすぐに分かります。
例えばそれまでは、子どもの意識は
いつも家族に向けられていたはずなのに、
「今度の日曜日、水族館に行こうか」って提案しても
「友達と遊ぶ約束したから無理」って言われたり、
「宿題があるから行かない」って言うようになります。
家族よりも自分の立場、付き合いなどを優先して
親に自分なりの意見をしてきます。
親のことを全面的に信じ肯定し
受け入れてくれる時期は終わりを迎えます。
この時期を子どもが迎えると
時間の感覚が出てくるし、現実を意識し
焦る気持ちとか、できない自分とか、
矛盾を感じるなどの心の複雑性を増してきます。
これは、人の成長の過程では当然のこと。
それなのに、それを理解できないと
急に子どもがわがままになったとか
言う事を聞かなくなったと
子どもが悪くなってしまったと
勘違いしてしまう親になってしまいます。
子ども自身、急に見える状況が変化するので
訳もわからず、気持ちが不安定になる時期でもあります。
この不安定さのバランスをとるときに
重要なのが、子どもの心の根っこです。
しっかりと自分というものの
土台が出来上がっていれば
揺らぐような出来事があっても
耐えていく力が持てます。
目覚める前の自分だけの世界に生きていられた
子どもの時期にたくさん自分自身を経験して
自分としっかり対話して
自分のことを肯定できていることが
とても大事になります。
子どもの世界という夢の中にいられる時間は約10年間。
でも、その時間はその後の人生で感じる時間よりも
とても長い時間を与えられています。
それだけ、この時間の充実は大事。
大人から見ると、たった10年。
親は、子どものためにという気持ちで
夢の世界の外側の現実世界を早く、たくさん
子どもに見せてあげたくなります。
でも、子どもは自分のペースで
新鮮な感動を見つけ、味わっていく
時間のない世界の中に浸ることで
ゆっくり着実に自分を作っています。
現実世界は、10年もすれば見えるもの。
慌てて親の価値観を被せて見せる必要はないのです。
自分ってこんなことが好き。楽しい。
自分ってこんなことが嫌い。怖い。
じっくり自分と対話します。
外側の現実世界を見せることは
子どもの邪魔にしかならないと思います。
夢の中の時間を楽しむ子供を
愛情を持ってゆっくりと見守って
感動を一緒に味わってくれる人が
そばにいるということが
子どもにとって大事な経験ではないのかなと思います。
10歳までは子どもの夢の中にいる時間を
たっぷり味わえるような空間を
確保してあげたいと思います。